皆さんは「クラウド」という言葉、聞いたことがありますでしょうか。
少し前に、IT業界でとても流行っていた言葉です。
今でも、インターネットやWebサービスを使う上で、とても大事な言葉ですね。
何を隠そう、僕は日本で仕事をしていた時、「クラウド開発事業部」におりましたから、クラウドに関しては「専門家(笑)」です。
(ただし、「(笑)」が付きます。)

「Web」と深く関わっているこの言葉、今日はその意味を見ていきましょう。
Gmailの例
皆さんは、「Gmail」とか、「Yahoo!メール」って、使ったことありますか?
インターネット上で利用できる、メールサービスですね。
とても便利なので、利用されている方も多いのではないでしょうか。
クラウドを説明する上で良い例なので、一旦Gmailなどのメールサービスを例にとって、「クラウドとは何なのか」を見ていきましょう。
たとえば今、あなたが手にしているコンピューターでインターネットを開いて「gmail」という言葉を検索をしてみると、GmailのWebサイトを開くことができます。
そしてそのWebサイトのログイン画面で、あなたのメールアドレスとパスワードを入力すれば、あなたが普段やり取りをしているメールを見ることができます。
便利ですね。
いつでも、どこにいても、あなたのコンピューターがインターネットに繋がっていさえすれば、メールサービスを利用できます。
その時、あなたは「Webブラウザ」と呼ばれるソフトを使って、Gmailを見ていますよね?
「Webブラウザ」に関しては以前、「【初心者向けに解説】ウェブブラウザって何?」という記事で解説をしましたが、「インターネット エクスプローラー」や、「ファイアーフォックス」、「クローム」、「サファリ」、「エッジ」などと呼ばれるソフトのことですね。
あなたが「Webブラウザ」を使ってGmailを利用しているということは、Gmailは「Webシステム」であると言えます。
「Webシステム」に関しても、以前「【初学者向け】Webシステムって何?」という記事の中で少し説明をしました。
そこで説明した「Webシステム」とは、「Webサーバー」と呼ばれる、世界のどこかにあるコンピューターと、あなたが今手にしているコンピューターの中にある「Webブラウザ」というソフトが、相互にやり取りをすることで利用できるシステムのことでした。
「Webサーバー」に関しては以前、「ウェブサーバーってなに?」という記事の中でもご紹介をしているので、興味がある方はこちらもご参照ください。

「Webシステム」においては基本的に、システムのデータは全て「Webサーバー」が持っています。
そして、その「Webサーバー」に対して、「Webブラウザ」が、「こんなデータ下さい」という風に、リクエストするのでしたね。
つまりあなたがGmailを使っていれば、普段、あなたのメールのデータは全て、「Webサーバー」の中にあります。
その「Webサーバー」からネットワーク経由で送られてきた情報を、あなたは普段見ているのです。
では、その「Webサーバー」というコンピューターは、どこにあるのでしょうか?
Gmailを運営しているのは、「Google」というアメリカの会社ですから、「Webサーバー」もアメリカにあるのでしょうか。
それとも、あなたが日本語でGmailを使っているなら、「Webサーバー」も日本にあるのでしょうか。
答えとしては、もしあなたが日本からGmailを登録して使い始めたのであれば、基本的には、日本国内や、アジアに「Webサーバー」はあるはずです。
しかし、正確な位置を私たちは知りません。
インターネットに繋がっていれば、どこからでもメールを使えるのですから、別にどこに「Webサーバー」があるのかを知る必要もありません。
実はGoogleという会社は、世界中にいくつも「データセンター」と呼ばれる建物を保有しています。
その「データセンター」という建物にはコンピューターがギッシリと詰め込まれていて、そのコンピューターひとつひとつが、「サーバー」と呼ばれています。
あなたのメールのデータも、実はそれらの「サーバー」の中に保管されています。
しかし、別に僕たちは、そのデータセンターがどこにあるのかを知らなくても、それらのコンピューターを、インターネット経由で使うことができます。
もっと言えば、僕たちのメールが、本当に1台のサーバーの中で管理されているのかも知りません。
何台かのサーバーの中に、分けて保管されたりしているかもしれません。
僕たちは、そういうことを全く考えずに、日々、Gmailというサービスを利用しています。
実はこれが、「クラウド」と呼ばれるものです。
(ここでやっとクラウドという言葉が出てきました…)

英単語の「cloud(クラウド)」というと、「雲」という意味ですね。
「確かにそこにあるんだけど、まるで雲のように、なんだかフワフワしていて、有るんだか無いんだか良く分からない」
「どこにあるんだか良くわからないし、まるで雲の上にあるサービスを利用しているようだ」
といった感覚を受けることから、「雲」という意味の「クラウド」という言葉が使われるようになりました。
正確に言うと「クラウドコンピューティング」と言います。
これは間違いなく、近年のインターネットの普及によってもたらされた言葉です。
結局、クラウドって何?
「クラウド」というと、なんだか分かりにくい言葉ですが、結局のところ、
「ネットワーク経由で、どこかのコンピューターを使わせてもらうこと」
です。
そしてその時、「どこにある、どんなコンピューターを借りているのかは気にしなくて良い」というのが特徴ですね。
ただそれだけのことなのですが、それを流行らせるために、なんだかオシャレに「雲」とか言ってみただけの事です。

Gmailで言えば、
「僕たちのメールを保管しているGoogleのコンピューターが、どこでどういう風に管理されているのかは良く分からないけど、とりあえずWebブラウザからメールが使える」
という感じです。
「なんだか雲の上にメールが保管されてるみたい。」
ということですね。
Gmailの他には、どんなクラウドサービスがあるの?
「クラウド」を使っているサービスのことを、「クラウドサービス」と呼びますが、世の中にはたくさんの「クラウドサービス」があります。
たとえば、「Dropbox(ドロップボックス)」や、「Google Drive(グーグルドライブ)」、「One Drive(ワンドライブ)」というサービスを聞いたことはありますでしょうか。
これらは、クラウド上にデータを保管しておけるサービスです。
「ネットワーク経由でコンピューターを借りて、その中にデータを保存させてもらってるんだけど、そのコンピューターがどこにあるのかは良く分からない」
ということですね。
iPhone(アイフォン)を使っている方であれば、「iCloud(アイクラウド)」というサービスを利用されている方もいるのではないでしょうか?
これも、
「スマートフォンの中のデータを、どこかのコンピューターを借りて、保存させてもらうサービス」
です。

こういう風に、僕たちは私生活の中でも、無意識に「クラウド」を使っています。
また、今まで説明してきたのは、クラウド上に、もう既に出来上がったサービスを使わせてもらう例です。
どういう事かというと、ITエンジニアの人達が「クラウド」を利用する時は、
「クラウド上で、コンピューターだけを借りて、そのコンピューターの中に自分が作ったプログラムを置いて、自分のサービスを公開する」
という使い方があり得るのです。
そして、そういうことをするためのサービスも、たくさんあります。
名前を覚えても、あまり使う機会はないかもしれませんが、有名なものでは「Salesforce.com(セールスフォース ドットコム)」や、「Amazon Web Service(アマゾン ウェブ サービス)」と呼ばれるものがあります。
どちらかというと、技術者向けのサービスですね。
これらのサービスは、「メール」や「データ保管」などの、もう既に出来上がったサービスを使わせてもらうのではなく、コンピューターだけを借りて、その上に自分でシステムを作ることができるサービスです。
「そういう種類のクラウドもある」、ぐらいに覚えておけば良いと思います。
クラウドの利点
クラウドは、結局のところ「ネットワーク経由でどこかのコンピューターを借りて使うこと」ですが、どうしてコンピューターを借りる必要があるのでしょうか。
自分のパソコンやスマートフォンの中に、すべてのメールやデータを保存しておいたのではダメなのでしょうか。
一般的にクラウドには、以下のような利点があります。
- 自分のコンピューターの容量を節約できる
- 複数のコンピューターでデータを共有できる
- プロが管理をしてくれる
- 自分のコンピューターが使えなくなっても、データは残る
一つずつ、見ていきましょう。
コンピューターの容量節約
たとえばあなたのスマートフォンやパソコンに、ものすごく沢山の写真や動画が保存してあった時、ある時点でデータの容量がいっぱいになってしまいます。
さらに、いっぱいになる前に、あなたのコンピューターの動きが遅くなってしまったりもします。
データをクラウド上に置いておけば、そういった心配はありません。
なぜなら、クラウド上に保管したデータは、あなたのコンピューターの中に置いておく必要はなく、「どこかにある、借りたコンピューター」の中に入れておくことができるからです。
普段から、積極的にクラウド上にデータを保管するようにしておけば、あなたのコンピューターのデータの容量がいっぱいになるのを防ぐことができます。
複数のコンピューターでデータを共有できる
クラウドを利用していれば、あなたの持っている複数のコンピューターから、同じデータを見れるようになります。
たとえばGmailの例でいえば、普段スマートフォンからGmailのサービスを利用している人でも、パソコンから同じようにGmailのアカウントにログインすれば、同じようにメールのデータを見ることができます。
これがもし、あなたのスマートフォンの中だけに保存されているメールであれば、パソコンからそのメールを参照することはできません。
このように、複数のコンピューターから同じデータを参照したい時、クラウドサービスを活用することは、とても便利な手段です。

プロが管理をしてくれる
一般的にクラウドサービスを提供しているサーバーは、先ほどGmailの例でご説明したように、「データセンター」の中で管理されています。
このデータセンターは、たとえばGoogleのようなIT企業が管理をしているため、そのコンピューターを管理しているのは、プロの技術者達です。
コンピューターを持っていると、どうしても、たまに技術的な操作を行わなければならないことがあります。
たとえば、あなたが持っているパソコンやスマートフォンも、定期的に「アップデート」を行っているのではないでしょうか。
また、パソコンであれば、「ウィルス対策ソフト」というものをインストールして、コンピューターウィルスに感染しないようにしておかないといけません。
なにか故障が起きたときも、その対処を行う必要があります。
クラウドサービスを使っていれば、そういった面倒くさい技術的なセッティング等は、全てそのデータセンターを管理する技術者たちがやってくれます。
「自分がセッティングしたコンピューターよりも、プロがセッティングしたコンピューターにデータを置いておいた方が、安全そうだ」
という判断もあり得ると思います。
自分のコンピューターが使えなくなっても、データは残る
定期的にクラウド上にデータのバックアップを取っておくことで、コンピューターが壊れたり、紛失してしまった際に、データが消失するリスクをなくすことができます。
たとえば、スマートフォンで撮影した写真を、全てそのスマートフォンの中に保存しておいたとします。
その状態でそのスマートフォンをトイレに落としてしまったら、大変です。
なぜなら、その写真のデータはスマートフォンの中にしかありませんから、そのスマートフォンが壊れてしまえば、データも一緒に消えてしまいます。
でも、定期的にクラウド上にデータのバックアップを取っておけば、そのデータは「借りているどこかのコンピューター」の中にあるわけですから、そこからデータを持ってくるだけで、簡単に復元ができます。
その「借りているどこかのコンピューター」が壊れたらどうするの!?
と、思われるかもしれません。
ただ、一般的に、データセンターの中に保管されているデータは、何台ものコンピューターに重複して保存されていて、コンピューターが一台壊れただけでは消滅しないようにされています。
また、先ほど説明したように、そのデータセンターのコンピューターを管理している人たちは、コンピューターのプロの人達ですから、故障などの対処方法も知っています。
そのため、クラウド上にデータを置いておけば、万が一の時にデータが消えてしまうリスクを、大きく減らせると言えるでしょう。

クラウドのデメリット
ここまで、クラウドの「良い点」を説明してきましたが、もちろん、「悪い点」もあります。
クラウドのデメリットとしては、一般的に以下のことが言えます。
- データを外に置いておくのは、なんだか不安
- 勝手にデータが解析されたりする
- ネットワークに繋がっていないと利用できない
- ネットワークが遅い環境だと、動作が遅い
こちらも一つずつ、見ていきましょう。
データを外に置いておくのは、なんだか不安
いくら「プロが管理してくれている」といっても、やはり自分のデータを誰かに預けておくのは、なんだか不安。。。
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
安全と言われても、近年、企業からの情報流出のニュースなども目にしますし、「万が一のことが…」と、考えてしまうこともありますよね。

勝手にデータが解析されたりする
近年IT企業では、「データ」というものの価値が見直されています。
「どんな些細なデータでも、しっかり解析して、統計を取ると、役に立つ情報が得られる!」という思想が大きな支持を得ています。
つまり、あなたがクラウド上に預けているデータも、その解析の対象です。
IT企業側があなたから預かっているデータを、一定の範囲を超えて利用してしまえば、それは犯罪です。
そのため、いくら「解析をする」といっても、その用途には超えられないラインがあります。
信頼のおける企業のクラウドを利用していれば、その解析されたデータが、「悪用」されるようなことにはならないでしょう。
Googleなどの大企業は、社会的な責任もありますし、滅多なことはしないはずです。
それでも、「世界中の情報を整理しつくすこと」を、Googleという会社は目標としていますから、データの解析は彼らにとって、非常に重要なミッションです。
そういった地道なデータの整理を繰り返すことによって、精度の高い地図サービスや、自動運転など、人々が驚くようなサービスを生み出し続けているところが、Googleという会社の素晴らしいところではありますが、それでもやはり、自分のデータが解析されるかもしれないというのは、少し怖い感じもしてしまいますね。

ネットワークに繋がっていないと利用できない
クラウドサービスなどのWeb上のサービスを利用する上で、これは避けては通れない課題です。
地下鉄や田舎のエリア、旅行で行った海外など、ネットワークに接続できる環境が確保できなかった場合、サーバーからデータを取得することができず、クラウドサービスは利用できません。
今、自分が手に持っているコンピューターに全てのデータが入っているのであれば、ネットワークなどに接続する必要はないのですが、クラウドを利用している以上は、この問題は仕方がないと言えます。

ネットワークが遅い環境だと、動作が遅い
インターネットに繋がっていれば、どこからでもクラウドサービスを利用することはできるのですが、もしネットワーク環境があまり整っていないところだと、「繋がりはするのだけど、動作が遅い」ということもあり得ます。
また、スマートフォンを利用されている方は、契約内容によっては、「1か月に利用できるデータはこれだけ。それを超えると、動作が遅くなる。」といったことも普通にあります。
クラウド上のサービスを利用するということは、すべてネットワーク経由でサービスを利用することになるわけですから、どうしてもデータ通信容量を多く使うことになります。
そして、ネットワーク環境が遅くなると、サービスを利用しているときの動作もゆっくり…ということになり、
「あ~、データ見るだけのために、なんでこんな時間かかるの!? もう早くしてよ!」
ということになってしまう可能性もあります。。。
まとめ
如何だったでしょうか。
ネットワークに繋がっていさえすればサービスが利用できる、「クラウドサービス」。
便利な一面もありますが、少し利用を踏みとどまってしまうような側面もあったと思います。
ただ、ITに関わらず、どんな技術にでも負の側面はあります。
そういったマイナスの面とどのように向き合いながら、その技術を利用・発展させていくのかが、大事なのだと思います。
本日、覚えて頂きたいのは以下の内容です。
- クラウドとは、「ネットワーク経由でどこかのコンピュータを借りて、使わせてもらうこと」
- インターネットの発達によって、こういった形態のサービスが多くなった
- クラウドにはメリットもデメリットもあるので、リスクを理解した上で、用途に応じて賢く利用しよう
この記事が、「クラウド」という、なんだかよく分からないものを理解する上での助けとなれば幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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