突然ですが皆さんは、「炎上プロジェクト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、IT業界、特にSIerなどと呼ばれる業界において、非常によく用いられる言葉です。
私も何度か、炎上プロジェクトに参画致しました。。。
今日は、IT業界における「炎上」という言葉の意味について見ていきましょう。
炎上とは?

普通の人が「炎上」と聞いたとき、真っ先に思い浮かべるのは、火がメラメラ燃えている光景ではないでしょうか。
「炎上」とは文字通り、炎が燃え上がることですね。
もしくはあなたが頻繁にインターネットの掲示板やSNSを利用される方であれば、「炎上」と聞くと、問題発言に対して批判が殺到することをイメージされるかもしれませんね。
どちらも正解なのですが、ITシステムを開発するプロジェクトに関してこの「炎上」という言葉が使われる場合、少し違った意味合いになります。
IT業界における炎上とは?
ITシステム開発においては、計画段階で確保していた予算や開発期間が決定的に足りなくなったプロジェクトのことを、
「炎上プロジェクト」
と呼びます。
つまり、あまり良い意味で使われる言葉ではないですね。
直接的には、納期が差し迫っているけれども、期日までにシステム開発を完了させることが、非常に難しいような状況に陥ってしまったプロジェクトを指すことが多いです。
もし、プロジェクトの予算に余裕があれば、新たに人員を追加して開発のスピードを上げることも考えられます。
(クラッシングなどと呼ばれるプロジェクト管理手法ですね。)
しかし、予算に余裕がない場合や、技術的な専門性が高く、間に合わせで雇ったような人員では逆に足手まといになるような場合は、その手段は取れません。
などなどの理由で、
もう絶対納期に間に合わないじゃん!
という状況になってしまったプロジェクトを揶揄して、炎上プロジェクトと呼ぶのです。。。
一度炎上したプロジェクトの炎は、中々消えない

一度プロジェクトが炎上してしまうと、そのプロジェクトを再び正常な状態に戻すのは、非常に困難です。
赤字覚悟で追加人員を投入したとしても、他のプロジェクトから急遽参画した人員が作業に慣れるまでには、時間がかかります。
また、そのプロジェクトや現場独自のやり方について、追加要員に教育を行う必要があります。
効果的な教育を行えるようなメンバーは、プロジェクトにおいてもある程度中核をなすメンバーのはずですから、そういったメンバーの時間を追加要員の教育に割かなければいけないということは、プロジェクトの進捗に対する更なる打撃になりかねません。
そして、「このままでは間に合わないことは分かっているんだけど、成す術がない」という状況のまま、ズルズルと遅れが拡大していきます。。。
IT業界の炎上プロジェクトに対して一般的に取られる対策とは

一旦プロジェクトが炎上してしまった場合、IT業界では一般的にどういった対策が取られるのでしょうか。
包み隠さず言いますと、ズバリ、
残業
です。
時間は足りないけれども作業の量は変えられず、作業人数が増やせない状況なのであれば、取れる手段はただ一つです。
人員一人当たりの作業量を増やすのです。
何とも日本式の対応策ではあるのですが、これが本当に効果的な場合は、非常に限られます。
と言うのも、1日や2日の残業で挽回できるような遅れであれば、炎上という言葉は使われないでしょうから、炎上プロジェクトを挽回するための残業は、終わりが見えません。
来る日も来る日も毎日残業を行うことになります。
そういった生活が長期間続けば、開発メンバーの疲労も蓄積されていきます。
また、そういった状況では、休日出勤も頻繁に行われますから、疲労を回復するタイミングを完全に失うことになります。
そういった状況で発揮できるパフォーマンスも、当然高くはなりません。
そこを気合と根性で押し通すのが、古き良き日本のビジネスマンなのでしょうが、炎上プロジェクトの挽回を達成できる可能性は低いですよね…
(毎日遅くまで残業している姿を見せて、納期の遅れをクライアントに許してもらう、という効果はあるかもしれませんが…)
IT業界には、炎上を止める「火消し」と呼ばれる人たちがいる

ここで登場するのが、「火消し」と呼ばれる人々です。
火消しとは、一言で分かりやすく言うと、スーパープログラマーのような人たちです。
高い技術力をもって、炎上プロジェクトに途中から参画して、超高速でシステムを作り上げて、そのプロジェクトから去っていく人たちです。
私が日本のSIerで働いていた時、先輩から言われたのが、
「炎上プロジェクトには一度は参加しておいた方が良い。なぜなら、社内の伝説と呼ばれる人たちに会えるからだ。」
ということです。
要は、一度炎上してしまったプロジェクトを正常に戻すためには、非常に能力の高い要員を追加する必要があり、その人たちが「火消し」と呼ばれているのです。
ただこの構造、火消し本人からすると、かなりキツイ構造であると思います。
この人たちは、非常に高い技術力を持ってしまっているが為に、常に様々な炎上プロジェクトからお呼びが掛かります。
「こっちも炎上した!助けてくれ!」
「こっちのプロジェクトも炎上したから頼む!」
行く先々、メンバーが疲弊した、残業が常態化しているプロジェクトで、高いパフォーマンスを発揮することを求められるのです。。。
中々、割に合わない仕事かもしれませんね…
ITプロジェクトが炎上する理由とは

IT業界にいると、この「炎上」という言葉、非常によく聞きます。
ITプロジェクトというと、何だかしょっちゅう炎上している印象です。
なんでそんなことになってしまうのでしょうか?
それには、SIerと呼ばれる仕事の特徴が関係しています。
特に日本のSIer業界において顕著に見られる傾向として、
「とにかく顧客の要望を取り入れた、オーダーメードのシステムを作る」
というものがあります。
また、海外ではユーザー企業側の社内に知識が豊富なIT部門があることも多いですから、ユーザー企業側もシステムへの理解がある場合が多い側面もあります。
オーダーメードでシステムを開発するということは、顧客の要望を聞いてから、開発に取り掛かるということです。
ここが、あらかじめ出来上がった製品を売る業態と、大きく異なる部分でしょう。
顧客と一緒に「どういうシステムが良いのか」ということを話し合い、その開発にかかる期間や予算を見積もり、その見積もりに基づいて開発に取り掛かります。
しかし、お客様としては、やはり少しでも出費は押さえたいものです。
開発期間を長く確保するということは、その分の開発者の人件費を用意する必要があるわけですから、できる限り短い開発期間で、極力お金をかけずに開発を行おうとする力が働きます。
そして、IT企業側としてお客様にお見積りを提示する時に、中々バッファを含んだ開発期間などは出せません。
バッファを含めた「過去の開発実績」などから、的確な開発期間を見積もろうとすることもできますが、その過去の開発の効率がお客様にとって納得できるものでなければ、それも採用されない可能性があります。
ましてや、他にもっと安く開発を行えるライバル企業などがあるのであれば、そうそう余裕のある見積もりを提示するわけにもいきません。
以上のような理由から、ほとんど余裕のない、少しでもトラブルが発生すれば炎上一直線の見積もりが出来上がります。
しかし、ITシステムを作る上で、「トラブルがない」なんていうことはあり得ません。
少しでもプログラミングをされたことがある方ならわかると思うのですが、プログラムで何かを作った時、一発で正常に動くということは、まずないでしょう。
(よほどのスキルを持っている方は別かもしれませんが。。。)
普通はエラーが出たり、正常な動作をしなかったりして、少しずつ修正しながら正常な状態に近づけていくものです。
そういった技術的な側面は抜きにしても、メンバーが途中で離脱してしまったり、風邪で休暇を取るメンバーがいたり、要員のパフォーマンスが当初の想定通りでなかったりと、多くの問題が発生するものです。
計画段階である程度余裕を見ておかなかったプロジェクトにおいては、そういう事態が発生した場合、あっという間に開発の進捗は遅れ、炎上プロジェクトになってしまいます。
IT業界においては、その業態の性質上、どうしても炎上を避けるのが難しい事情があるのです。
まとめ(IT業界における炎上とは、納期順守が困難になること!)

如何でしたでしょうか。
IT業界における「炎上」という言葉の意味、おわかり頂けたでしょうか。
上述の通り、特に日本におけるSIerと呼ばれる業界は、その業態上、炎上を避けては通れない部分があります。
また、業態だけではなく、日本人特有の業務に対する考え方が、炎上プロジェクトでの要員の疲弊を促進している面もあるように感じます。
IT業界における炎上に関するこの記事を読んで下さったということは、あなたはこれからIT業界で働くことを志されている方でしょうか。
だとすると、ちょっとIT業界の嫌な面ばかり話してしまったような気がしますね。笑
しかし、もしあなたがそういった業界で働かれるのであれば、炎上には、どこかで必ず出会うことになると思います。
そういったときのために、この記事を読んで、心の準備をしたり、対策を立てておいて頂ければと思います。
この記事が、あなたにとって有益な情報となれば幸いです。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
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